Monday, January 7, 2013

鏡に向かわず

前回セント・マーティン島でかなり短くカットした髪が、5ヶ月も経つと流石に見苦しくなり始め、ここグレナダで切ってもらう事にした。島から島へのジプシー生活で苦労するのが美容院探し。大抵2回行く程長くは滞在しないので、行き当たりばったりになってしまうのだ。今回もマリーナ界隈にないものかと数人に尋ねるも、今ひとつ情報が足りない。

そんな中、スーパーマーケット近くの道行く女性が、確かそこの先のモールにあった筈よと教えてくれた。お、それならと行ってみた。が、行ってみると床屋さんの看板が掛かっている。でもまぁ、ユニセックスかも知れないと気を取り直してドアを開けると、中にはカーリー頭の男性ばかり5、6人。おっ、と思わず引きそうになった。ちょっと場違いかなぁと思いながらも、女性はやってくれないのと聞くと、指差す奥に女性のお客さんがひとり髪にカーラーを巻いてもらっていた。近づいて女性の美容師さんに尋ねたら、この人の後にも予約が入っていて忙しいから、明日の9時に来てもらえるかというので、じゃ、明日来ますと言って床屋さんを出た。

でも、今日はもう髪を切りたいという気持になっていたし、時間はたっぷりあるので、そのまま街まで歩いていく事にした。そこまで行けば美容院のひとつやふたつはあるだろう。30分程歩いて大型クルーズ船が到着する港の近くまできた。その中のモールにそれなりの感じの美容院を見つけた。20代くらいの女性にこれからカットしてもらえないかと聞くといいよと言ってくれた。あー、良かった。歩いて来た甲斐があった。中にはもうひとり女性がいたが、どうやら美容師のお友達らしく、ふたりで賑やかに喋っている。

いつシャンプーしましたと聞かれ、昨日の夜と答えたら、じゃー、濡らすだけにしましょとの事でシャンプー無し。それはいいけれと、ちゃんと乾かしてくれないから頭から水がしたたり落ちてちょっと気持ち悪いな。こんなんではハサミも使いづらいのではとちょっと心配。そしてその彼女、いきなりハサミを入れ始めた。「お客様、どのようにしましょうか」とも聞かない。こんな事は私の人生で一度もなかった。いや、正確に言えば、子供の頃、母親が問答無用でおかっぱ頭に切っていた時代を除けば。これはかなり腕に自身があるか、または?イヤ、それは想像したくない。ここは信用して任せようと思い、静かにされるがままになっていた。ところが、途中経過を観察しようにも、この美容師さん、鏡に向かわないのだ。ずっと横向きに仕事をしている。そのうち何と後ろ向きにされ、じっとこちらを見ているお友達と正面から向かい会う恰好に。

そういう風にして10分程したら、ハサミを置き、どうやら乾かす模様。おいおい、まだ前髪を切っていないじゃない。手で触ったら後ろ髪も長い。これはちょっと手抜きじゃない?そこでやさしい私からストレートに物を言う私が顔を出した。「終わるのがちょっと速過ぎる、遠慮しないでもっと切ってちょうだい」と。どうやらむっとしたのか、今度はチョキンチョキンともっとスピードアップしていく。まだ鏡を見せてくれない。ここまで来たら見てももう遅いだろうと覚悟を決めた。その後はケープを取らずにそのままブロードライ。したがって、髪が飛ぶ飛ぶ。しかるにブローだけは時間をかけてやっていた。

さぁ、いよいよ私自身と対面です。ぐるりと椅子を回して鏡に向かった瞬間、何だこりゃ?ショック!前髪が額の3分の2を広々と見せて、まっすぐに切られていた。マイッタ。これをカバーしようと懸命にブロードライをしていたのか?どうやら悪い予感が的中してしまった。彼女のカットのテクニックは想像以上にお粗末だった。最近はあまり見かけは構わなくなったとは言え、こういう髪型にされては落ち込んでしまいます。暗〜い気分でそこを後にした。即、日除け&雨よけ用に持っていた帽子をかぶって怒りの行進です。歩きながら反省した。最初からこうこうやってくれと言うべきだった。そして、鏡を見せてと言うべきだった。とは言え、技術や経験が不足していたら、鏡を見てもどうしようも無いが。。

帰りにまた床屋さんに寄り、申し訳ないけど明日は来られないと伝えた。その際、帽子を目深にかぶり、髪を切ってきた事が分からないようにした。良いですよと答える彼女の優しい笑顔が気持ちをほぐした。あー、あなたに切ってもらうんだったなぁと思っても後の祭り。

髪を切ってもらう度に懐かしいのが日本の美容院。程良い温度でシャンプーとコンディショニングをしてくれ、マーッサージまでしてくれる。そしてカットのテクニックも比べ物にならない程すぐれているのが普通。そりぁ、仕上がりが気に入らない時もたまにはありましたが、今日の鏡を見せてくれない美容師に比べたら、サービス精神の心構えひとつから違います。あー、前髪よ早く伸びてくれ。


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